アラスカの美しい自然を、写真と文章で表現し、
多くの人に愛された星野道夫さんの本『旅する木』の中に、
「ワスレナグサ」というタイトルのエッセイがあります。
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ワスレナグサは、英語で、forget me not、
このいじらしいほど可憐な花が、
荒々しい自然を内包するアラスカの州花であることが嬉しかった。
もう何年か前、北極海沿岸で過ごしたベースキャンプの近くでも
ワスレナグサは咲いていた。
こんな地の果てで、誰に見られることもなく、
淡いブルーの花びらをひっそりと開かせていた。
(中略)
風に揺れるワスレナグサもそんなことを語りかけているような気がした。
私たちができることは、過去でも未来でもなく、ただ今しかないのだと。
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星野さんの文章はいつも本当に、
優しく、穏やかで、そして真理を語っています。